やぶれかぶれの理科教諭その2

一生懸命教えてる・・・のつもり

 

能天気でお調子者の男のやることは、困ったものだ。今の時代に、こんなことやったら間違いなく訴えられて大問題になってる。時効(自己勝手に)ということで白状するので、ちょっとの時間、拝借します。

理科は他の教科と違って、1時間の中で覚えねばならない用語は数個、多くて10個以内に収まる。記憶力が普通なら数分で覚えられる。ところがこの科学的用語の意味を理解させるのに、観察をさせ、実験をし、検証し、法則を導き出すまでに、1~2時間かけるのが理科授業。この法則に裏打ちされた用語を使って、次の科学現象に挑むわけだ。したがって、この科学用語の意味を知ることは、次の理科授業に必須になる。

そこで考えたのが、満点学習会と称する虎ノ門道場だ。当時は意気揚々と元気よくやっていたが、今考えると実に恥ずかしく、保護者にご心配をおかけし、申し訳なかったと思っている。俗にいう“若気の至り”ということでご容赦願いたい。

単元が終了すると、まとめてストをやるのは、だれしもやることだが、私はその前に、穴埋め式の“用語記憶力テスト”を行う。テストなどとおこがましい限りで、要するに覚えていればいいのだ。

 例 三角州とは、川の上流から(   )されてきた土砂を、(   )付近に   

  (   )してできた地形のことである。

あえて、三角州という語は(   )にしないのがみそだ。子供たちはそれを知っているから、意味を覚えるようになる。

子供たちにとって恐怖は次だ。特に記憶力の弱い子にとっては苦痛だ。つまり、8割以上正解なら合格、10点以上8割未満正解までを再テスト対象者とした。問題は、9点以下は“見捨て”と称してテストを受けなくてよいとしたことだ。これに保護者が驚いたというか怒り出して、「先生は、勉強できない子を見捨てるのですか! 教育者のやることではありません。」とやられた。でも若気の至りで1歩もひかない。

当然ながら、9点以下の生徒が何名か出てくるわけで、開始した1~2回目あたりまでは、見捨てられたままでいたが、そのうち、「先生、再テスト受けさせてください。」という子が出てくる。必ず出てくる。多分その子の保護者のアドバイスのような気がする。そうなると、おれもわたしもと申し出てくる。

再テスト後がまた恐怖だ。合格点をとれないと、満点学習会に突入することになる。これは強制的に参加させる。読んで字の通り満点取れるまで帰れない放課後の学習会だ。部活動を終えてからの参加だから、夕刻の5時を過ぎて参加する生徒が多い。私もその日はさすがに部活を早めに終わらせて子供たちを待つ。記憶の苦手な子はいるもので、いつまでたっても覚えられないし、私も言い出した手前、覚えられるまで付き合うことになる。あの手この手を使って覚えさせる。だから、一番遅かったのが夜の11時近くになった時もある。ご両親の怒りはごもっともだ。でも引かない。電車通の私は当然、学校に泊まりとなる。私の神さんはといえば、「大変ね」とだけ言ってあとは何も言わない。これがちょっと薄気味悪い。夏はいいが、冬は正直参った。

こんなことがあった。・・・は、次回紹介といたします。       30.9.30